ベーからの手紙      

No.157  2012年5月26日

 元気ですか?
 すっかりあたたかくなりましたね。
 家の周りでは、いろんな花が咲いています。
 ピンクや白、赤のツツジ、黄色いニッコウキスゲ、
 濃い紫色のミヤコワスレ、そしてタンポポも。
 バナ子は、花や草の匂いをかぎながらのんびりと
 歩き回っています。


さて、日本でもあちこちで地震が続いてみんな気持ちが落ち着かないみたい
だけれど、このニュースを聞いた時は驚きました。
 「イタリアで大地震。被害が大きいのはボローニャとフェッラーラ。
  死者数名、ケガ人数十名、多くの住民が避難している。」
え!? ボローニャには、セント・バーナードの繁殖をしているヴィットリオさんが、
フェッラーラには、イタリア・セント・バーナード・クラブで最初に知り合った
グイドさん一家が住んでいます。
ヴィットリオさんのところで生まれたマーキュリー君が日本へやって来ることに
なった時、この2人が本当によく動いてくれたんです。
あゆちゃんは、前の留学の時にヴィットリオさんのお宅を訪ねて
セント・バーナード達に会っています。
2人とも、そして家族も、みんな大丈夫でしょうか。
ママが、すぐにイタリアへメールを送りました。
 「無事? 連絡乞う。」
もし、家を離れて避難をしていれば返事はすぐにはこないでしょうが・・・。
セント・バーナードの仲間たちはどうしてるだろう。

あ、メール着信の知らせ。ヴィットリオさんからです。
 「無事だよ。震源はここから50キロ離れてるから、この付近は大丈夫だ。
  毎日揺れてはいるけどね。
  
  今日か明日、ステッラに子どもが生まれそうなんだ。
  あゆみに遊びに来るように言ってよ。」
まず、1人目は安心。 地震よりも、バーナードの出産で大変みたいです。

もう1人のグイドさんからは、まだ返事がきません。
避難したのかな。 マチルダも一緒なんだろうか。
・・・お、きました、きました、グイドさんからのメールが。
マチルダの写真付きです。
 「みんな無事! ありがとう。
  ものすごく恐かったし、家の壁が少し崩れたけれど、君達の地震と
  比べたらこんなのたいしたことないさ。
  今回が初めて経験した地震だったけど、最後であることを祈ってるよ。
  この頃、考えるんだ。“日本で生きる”という意味をね。
  テレビでは、日本の津波の被害をいろいろと報道してる。

  ところで・・・去年のクリスマスに、マチルダが逝ってしまった。
  8才半だった。とてもつらかった。あれ以来、うちの家族には大きな
  穴が空いてしまった。」

あぁ、地震で無事だとわかってほっとしたけれど、マチルダがもう旅立って
しまったなんて。
9年前、マーキュリー君が日本へ来る手続きをいろいろとしていた時、
グイドさんは悩んでいました。
 「前の犬のガストンが死んで、うちには今セント・バーナードがいない。
  迷ってるんだ。マーキュリーと一緒に生まれた女の子を家族として
  迎えるべきかどうか。」
  「グイド、何も迷うことはないよ。決めよう!」
うちのパパとママがグイドさんの背中を押して、マチルダが新しい家族に
なったんです。
僕が14才半、ヨハンが10才半、マチルダにももう少し長生きして
ほしかったけど、これは運命、仕方がありません。

あゆちゃんの心配はしなくてもいいのかって?
大丈夫、あゆちゃんが住んでるペルージャは揺れた所からずっと離れてるん
です。 ほら、これを読んで下さい。
 「あゆは、何も感じなかったよ。ミラノに住んでる友達は揺れたって
  言ってた。 ニュースでボローニャの時計塔が崩れてるのが映ってた。
  
  あゆは、そろそろ“バナちゃん欠乏症”。
  この間、テレビで“HACHI”をやってるのに途中で気づいて、ほんとに
  最後の方だけ見たんだけど、それだけで号泣。
  バナちゃーーーん!! 忘れられたら、どうしよう。」

バナ子が、あゆちゃんを忘れる?
それは、バナが食べるのを忘れるのと同じことだね。

そうだ! グイドさん、今頃、ヴィットリオさんのところで可愛い子犬が
生まれているはずですよ。家族で、会いに行ってみたらどうかな?
 
                          
                            今年はここまで、またね。 
                                 Beethoven

クローバーに囲まれるバナ子

表情は、どことなくさびしげ
さようなら マチルダ (グイド夫人のシモネッタさんと)
ペルージャの湖で  あゆ&ルシール
No.156 No.158