白バラの心  No.8      ガン日記


「No.6」に続く、最後の日記です。

この頃から、検査・治療を受けていた病院に強い不信感を抱くようになり、手術を逡巡します。
「日本では主流ではない、まだ30例しかない新しい治療法」を医師にすすめられ、
「自分が治療のモデルになるのであれば」と、本人は前向きにその治療に取り組みました。
抗ガン剤の投与が終わった後に放射線治療を受け、それで効果がなければ摘出手術、という
段取りでしたが、「この方法は、手術後の結果は悪い可能性が高い」という説明を治療後に受け、
大病院での、治る可能性が少しでも高い新しい治療法と信じて苦しい治療を続けてきた本人は、
自分は新しい症例のための実験材料だったのでは?という思いをぬぐい切れなくなったのです。

ガン患者の医師への不信による病院漂流や、ワラにもすがる思いで健康食品を頼るようになることは
最近の新聞でも連載報道されていましたが、姉も、全くその通りでした。


 両親が転勤先で必ず咲かせたバラ        銀座のてんぷら店



   
   2003.10.22    K社から、本リニューアル出版の話あり。

   10.28+29     生検

   10.31
 夢を見る。委員会室で、委員会終了後、Nが私に「もう少し待って下さい」と言った。

   11.5
 クリスマス展とドールハウス展の企画を進めてもらえることになった。

   11.6
 ダメだった。
 細胞(約1cm)は生きていて、GUだがGVと形がとてもよく似ているとのこと。
 放射線を70回やっているので術後の治りが悪く、入院はふつうの2週間より長くなる。
 1.9に入院予定。

   11.10
 Tさん  きのうは、せっかく励まして下さったのにすみません。
 ただ、今は、健康な人が幸せになった話を聞いても、「よし、私もがんばろう!」
 という気持ちにはなれないのです。
 ここのところ体調がよかったので、よくなっていると思っていましたが、
 先日の検査で、ガンが小さくはなったがタチの悪さは変わっていない、ということがわかりました。
 つまり、私の場合は、あと何年生きられるか、の問題なのです。
 私自身はこのショックを乗り越えるのに精一杯で、他のことを考えている余裕がありません。
 どうか、わかって下さい。
 ガンが治った人もいますが、治らずに死んでいった人もたくさんいます。
 気の持ちようで多少はよくなりますが、ガンは気力で治せる病気ではありません。
 ことに、タチの悪いガン細胞では。

 あと何年生きられるかは、手術が済めばおおよそわかると思います。

   11.24
 ひと月位前から、右胸・肩・首・右腕に違和感がある。2年前にも感じていた、鈍い痛みのような、
 つるような感じだ。
 ガン細胞が増えているのだろうか。それとも、NK細胞がガン細胞と戦っているのだろうか。

   12.2
 F医師に手術の延期を頼む。
 この間にガンが転移するかもしれない。肩・首のリンパがはれてきたら、もう手術は不可。
 今のところ、骨・肺・肝臓はOK。 白血球 3500。
 胸・肩・腕のジーンという感じは、放射線の後遺症とのこと。

   12.4〜12.30  ドイツ
 体は、6月と比べると、とても楽だった。
 フワフワ、クルクルの天然パーマが風にふかれて顔にからみつく感触を生まれて初めて楽しんだ。

   2004.1.16
 今日は、本来なら手術をしていた日。
 12.25のるすTelに、A医師から「手術の日が決まりました」とのメッセージ。
 
 今後どうなるのだろうか、という不安はある。
 しかし、自分の選択にかけてみようと思う。

   1.20
 F医師 「ちょっと大きくなってるね」    ガンは大きくなっていた。 2×2.5cm
 ショックだった。  なるべく早く手術をすることをすすめられた。

   2.17    A医師 「大きくなっている」

   3.7     
 エーデルワイスの芽が出ていた。何かいいことがありますように。
 とにかく、本の原稿を仕上げよう。

   3.16    くせ毛にもどるのだろうか? (髪の毛を1本、テープで貼りつけ)

   4.5
 治療が終わって1年になる。 やっと、体が楽になった感じがする。

 タイトル不明のビデオをチェックしていたら、その中に”モリー先生との火曜日”があった。
 見直しをして思った。 私も、”よい死に方”を心がけて、これからの日を過ごそうと。

 夜、H社の原稿を書き始めたが、せっかく書いた4枚を間違って消してしまった!

   4.8
 夢の中に、ショーン・コネリー演じる作家フォレスターが出てきて、「1日2時間、毎日必ず書け」と言った。

   4.10    メダカが卵を産んだ。 いいことがあってほしい。

   4.19    NさんからTelあり。 カルチャーの講座、OK!

   4.23    メダカが3匹、卵からかえっていた。

   8.11
 第2回抗ガン剤開始。 乳腺が1.5×2×1cm わき下が1cm+0.7cm
 マイクロ波がきいているのかどうか、不明。
 手術を強くすすめられたが、今手術をするなら2年前にした方がよかったのだ。
 抗ガン剤を希望して行なうことにした。2回後に効き目を確かめて、ダメなら手術とのこと。
 タキソールの自己負担分、3万円!

 16:00 江戸博で待ち合わせ。 エルミタージュ展を見る。
 17:30〜20:00 夕食。 CC(シビックセンター)が見えた。

   8.12〜16   軽い吐き気、みぞおちが時々ドーンと痛む。

   8.22    髪の毛が抜け始める。1年数ヶ月で20〜22cmになった。
 
   8.24   
 ブラシで髪をとかしたり、手で髪をさわると、まとめて髪が抜ける。
 2年前より早く抜け始める。ちらほら白髪もあった。
 (抜けた髪の毛を数本貼りつけ これは24cm、24.5cm、25cm、と長さを記入)

   8.25
 私のフワフワ、クルクルの髪の毛、せっかくここまでのびたのに、また失うことになった。
 子供のころから夢見ていた、やわらかな巻き毛。
 もう少し長くのばして結い上げてみたかった。1度でいいから。
 この次は、どんな毛が生えてくるのだろう?
 手でさわっているだけで抜けてくる。ブラッシングするたびに、ごそっと抜ける。

                                             (つづく