ベーからの手紙      

No.145  2010年3月26日

 元気ですか?  お久しぶりです。
 去年の春からイタリアで勉強していたあゆちゃんが帰ってきて、
 我が家は、またにぎやかになっています。
 だけど、秋におじいちゃんが病気で倒れ、病院へ通うために
 うちの家族は少し忙しくなったみたいです。
 ヨハンはおじいちゃんと仲良しだったから、心配だって
 言ってます。


さて、我らが妹、バナ子。
相変わらずおてんばで、やんちゃで、手がつけられません。
3才と言えば、僕は幼いあゆちゃんのお守りをしていたし、ヨハンもだいぶ
大人びていた頃です。
それと比べると、バナ子はまるで子犬。やれやれ。

訓練所から外の世界へ出て、たくさんの人やたくさんの車、いろんな物音、
いろんなことを経験して、バナ子もだいぶたくましくはなりました。心も、体もね。
自転車と並走して駆け足の運動、休日には時々山を駆け回り、背は低いけれど
がっちりした体つきの女の子になってきました。

だけど、外の世界でどうしても避けられないのが、他の犬達との接触。
体の大きな僕達がかかわらないようにしようとしても、僕らを見ただけで恐がる
他の犬が、先に攻撃をしかけてくるんです。
僕も、そりゃ何度も、公園で歯をむいてうなられたり、飛びかかられたりしたし、
かまれたこともあります。大きめの日本犬に腰に飛びついてかみつかれた時も、
じっと我慢したもんですよ。
ヨハンもね。あいつは、相手に何をされても、何頭もの犬に囲まれても、
おとなしく耐えていたっけ。
そしてバナ子も、とうとう攻撃の洗礼を受けました。

広瀬川の河原を、バナ子とママがのんびり歩き出した時、あっという間の
出来事でした。
河原のずっと離れた向こうの端から、前触れなしにドドドッ!と黒と茶色の
軍団が吠えながら疾走してきます。ダックスフンドの集団です。
キャンキャンキャンキャン!! ギャンギャンギャン!!
そりゃ、うるさいの、すさまじいのなんのって。
バナ子をめがけ、隊列組んで一直線。
7、8・・・9、10頭? いったい全部で何頭いるんだろう?

バナ子は、臆病なところはあるけれど、そりゃあ気が強い女の子です。
敵の来襲に気づくと、ガッと肩をいからせて身構えました。
ダックスフンド軍団が、ぐるりとバナ子を取り囲みます。キャンキャンキャン!
そして、次々と、いろんな方向からバナ子に飛びかかろうとします。
正面、右、左、後ろ。
バナ子は、ボクシングの選手のように足を細かく動かして向きを変えながら、
雨のように降りかかってくる軍団を威嚇します。
あ〜っ! 1頭がバナ子に飛びついた!
バナ子、目をつり上げて相手を振り落とした。
ヒャイン。弱々しい声を上げたけど、敵はすぐに立ち上がる。
バナ子、本気で怒ってる。顔がけわしい。
ママも、バナ子の引き綱をしっかり握ったまま参戦しているけれど、
ダックスフンドの素早い動きに足が追いつきません。

2人の女性の飼い主さんが、闘う集団に声をかけています。
 「だめ、○○ちゃん、やめなさい。」
ママが声を張り上げます。 「早く捕まえて! 早くつないで〜!」

飼い主さんが犬達をまとめるのには、時間がかかりました。
1頭を捕まえたと思って次の犬に向かうと、前の犬がするりと逃げ出して
またバナ子を攻撃する。
ようやく軍団全部が捕まえられたのかと思ってバナ子とママがほっと一息を
ついたら、足元に集めただけで引き綱をつけていなかった!
1頭がバナ子めがけて走り出したら、再びドドドドッ!と攻撃開始。
ギャンギャンギャン!!  バナ子は、休む間もなく応戦です。

やれやれ、大変だったね、バナ子。
こんなにたくさんの犬に攻撃されて、びっくりしただろう?
外の世界では大変なこともあるけれど、でも、これから楽しいことも
たくさんあるからさ。負けずに、強くなっておくれ。
僕もヨハンも、いつも君を見守っているから。

                            今日はここまで、またね。 
                                 Beethoven

昔は、ドッグショーが開かれるグラウンドでした。

向こうの端から、突然軍団が走ってきました。

普段は甘えん坊の戦士です。

これから、きっと一層たくましくなるでしょう。
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