ベーからの手紙      

No.146  2010年5月10日

 元気ですか?
 
 桜の季節が終わって、タケノコ達がにょきにょきと
 伸びてきています。
 今年は春に雪が降って寒い日が続いたから、タケノコが
 土から顔を出すのがいつもの年よりも遅かったみたいです。



5月のお休み、うちの家族は蔵王へ出かけました。
ちょうど1年前は、おじいちゃんとヨハンが一緒、あゆちゃんはイタリアで
生活していました。
今年は、おじいちゃんはお年寄りが暮らす施設へ、ヨハンは天国へ、その代わり、
あゆちゃんとバナ子が一緒にいます。 

 「ブモッ、ブホッ、ブヒッ、ブオーッ!!」
まるでイノシシみたいなこの声は、広々とした草原に興奮して鼻を鳴らすバナ子の
喜びの声です。目をきらきらとさせて、バナ子は草の匂いをかぎながら
春のゲレンデを駆け回ります。 
 「ブホッ、ブホホー!!」
ひろちゃんとバナ子が並んで草の上を走ります。 ピューッ!
ところどころに残る雪をバナ子が大喜びで食べます。 パクパクッ。
こんな光景を見ると、パパとママは山に来てよかったと思うみたいです。

今回山にやって来た目的の1つは、バナ子にスイスの救助用の樽をつけて
写真を撮ることです。僕もヨハンも、首にこの樽をつけて写真を撮りました。
やっぱり、セント・バーナード犬としては記念写真を撮っておかなくちゃ。
でも、体重が50キロの小柄なバナ子は、首から樽をぶら下げるのを
いやがるかもしれません。
スイスで作られた革の太い首輪は僕の時から使っているから、壊れたところや部品を
あちこち修理してあります。大切なその首輪を首に巻いて・・・あれれ、バナ子には
大き過ぎてゆるゆるです。
あ〜、やっぱり。樽の重さに負けてふらふらとよろけます。
バナ子にとっては大きな樽が、右へゆらり、左へぐらり。
昔のスイス・アルプスのセント・バーナード達は、この樽にブランデーを入れて
雪深い山を歩いたっていうんだから、たくましかったんですね。
バナ子、君にはその樽をつけて歩くのは無理だ。
さぁ、座って写真を撮ろう。
おや、体は小さいけれど、胸を張るとなかなかサマになるじゃないか。
上出来、上出来。 この写真、お店に飾ってもらおうよ。

山のふもとの牧場のソフトクリームをあゆちゃんとひろちゃんに分けてもらった
バナ子の目はまん丸。無我夢中でペロペロとなめています。
他の観光客の人達が、そんなバナ子を周りで見て笑っています。
そうだ。1年前にこの牧場に来た時は、ヨハンが観光客に牛やポニーに
間違えられたんだっけ。 「ほら、牛がいるよ。」 「あ、ポニーだ。」って。
ポニーは子供達を背中に乗せて草原を歩いているけれど、牛はどこかな?
・・・いたいた。柵の向こうに3頭。
ひろちゃんとバナ子が牛の方に歩いて行きます。
お、牛がバナ子に気づきました。3頭並んで、じっとこちらを見ます。
 「ウ〜、ウ〜、ウウ〜。」
おやおや、バナ子が本気で恐がっています。
低いうなり声で、こっちへ来るなと必死に警戒信号を出し続けます。
君は雪山の救助犬にもなれないし、牧羊犬にもなれないみたいだねぇ。
ま、バナ子はかわいい妹でいればいいさ。

ヨハン、そう言えば君は、アイスクリームを木のバーごと飲み込んじゃったことが
あったっけ。覚えてるかい?
なに? もう1度冷たいアイスクリームを食べたい? 
うん、まったく同感だ。
                            
                            今日はここまで、またね。 
                                 Beethoven
ようやく春を迎えた蔵王
次回は、緑の草の上で撮りたいですね。
そのうちにまた、バナ子に重い樽を
我慢してもらいましょう。
牧場のアイスクリームは最高だな。
牛、きらい。大きいんだもん。
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