ベーからの手紙      

No.151  2011年8月13日

 元気ですか?
 あの大きな地震から5ヶ月が経ったんですね。
 世の中が引っくり返ってしまったみたいで、時間が止まって
 しまったみたいで、夜になるとすべてが真っ暗で、僕達も
 本当にびっくりしました。
 うちの家族が住んでいる町は元通りになったようにも見えるけど、
        見回すと、地震で壊れた建物があちこちで取り壊されていたり、
        「立ち入り禁止」や「危険」「頭上注意」の札が下がっていたりします。
          町の人達も元通りになったようには見えます。
          だけど、みんな心の中で何かが変わったみたいです。


3月のあの時、バナ子は2階から、ひろちゃんと一緒に大慌てで階段を駆け下りて
きました。外に飛び出してからも、いつまでも大きく揺れ続ける地面にすっかり
おびえて、ウロウロ、オロオロと動き回っていました。
次々と車道に集まってくる人達の顔を見上げては、「いったいどうしたんですか?
誰か教えてください。」と言いたげでした。
「バナ子、ふせて!」と家族に何度声をかけられても、グラッとまた揺れる度に
飛び上がってはウロウロ、オロオロ。
やがて突然雪が降ってきて、吹雪のようになって、空が真っ白になり、電気も消えた
まま。町の中の建物はみなシャッターを下ろしてシーンとなり、これからどうなるのか
恐いぐらいでした。

食べるものがない、電気が使えない、水もガスもない、寒いの灯油もガソリンも手に
入らない、バスも電車も動かないという生活は、誰もがとにかく初めてでしたよね。
いつまでこんな生活が続くのかが誰にもわからないから、貴重な食べ物が手に入ると
ほんの少しずつ、家族で分け合って食べていました。
バナ子も、ドッグフードがいつ買えるようになるかわからないので、食事の量を
減らしました。
あの時は、みんなが生きるのに必死だったように思います。
知らない人同士が声をかけ合い、助け合っていました。
こんな人間の姿を見るのは、僕達にとって初めてでした。

うちの家族も、いろんな経験をしました。
僕やヨハンに、いつも「おう!」と男同士の声をかけてくれていたおじいちゃんは、
地震の後から急に具合が悪くなり、10日後に天へ旅立ちました。
僕らがいつも玄関で寝ていたおじいちゃんの家は、地面が割れて大きく傾き、
あちこち壊れて、今もそのままになっています。
あゆちゃんの大学の卒業式はなくなり、ひろちゃんは入学式に出られませんでした。
食べるものを探して、自転車で毎日“買い出し”に走り回っていました。

時間の流れと共に町も人も少しずつ元気を取り戻したけれど、今までと違うのは、
みんなが「節約」という言葉を口にするようになったこと。
変わらないのは、元気なバナ子。
少しぐらいの地震なら「おや?」という顔をするだけで起き上がりもしなくなりました。
散歩の途中でひろちゃんやあゆちゃんを見つけると大喜びで駆け出し、
寝る時は大いびきをかき、すっかり地震の前のバナ子です。

だから、一緒にいる家族も、元気です。


                           今日はここまで、またね。 
                                 Beethoven

家族に元気をくれるバナ子



ひろが一緒だと元気百倍のバナ子



お茶目でかわいいバナ子

みんなから愛されるバナ子
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