ベーからの手紙      

No.150  2011年1月14日

 元気ですか?
 
 寒い、寒い、年が明けてから、本当に寒いですね。
 セント・バーナードと言っても毛が短くて毛量が少ない
 バナ子は、決して冬や雪を喜ぶわけではありません。
 いかにも寒そうに、くるりと体を丸めています。


この寒さの中、うちの店の周りでは、今いろんな音が響いています。
バナ子が散歩に向かう西公園の手前では、地下鉄の駅を作る工事、
大きな青葉通りは、道路の下を電車が走る線路の工事。
そして、僕、2代目のベートーベンが元気だった頃の昔の店があった場所にも、
ダンプカーが次々と出入りしています。

ここには、28年前にパパとママが最初に開いた店がありました。
背中合わせにホテルが建っていて、その頃のお店の広告には
「ワシントンホテル裏」と載せていました。
僕は、そこから西公園や広瀬川の河畔へ散歩に出かけていました。
世の中が「バブル」と呼ばれて人間達が浮かれていた時代、「立ち退き」
というのがあって、店は別な場所へ移りました。
それから間もなく、土地を買い取った会社は倒産してしまったそうです。
そして、ホテルもいつか名前が変わり、今、そのホテルだった建物が
取り壊されています。

崩れていく大きな建物を見ていると、生まれてからたったの1ヶ月で僕が
ここへ来た頃、大学生だった阿部お兄ちゃん達がお店でアルバイトをしていた
頃、あゆちゃんが生まれた頃を思い出します。

2度目の店は坂の下にあり、僕は階段を上がって西公園へ行きました。
ここにいた時に生まれたのが、ひろちゃんです。
次第に僕は年を取って足の動きが悪くなり、階段を1段上がるのにも
とても時間がかかるようになってしまいました。

そして、お店はまた「立ち退き」。
仙台市が新しい道路を作るという話でした。

3ヶ所目の今の場所に店が引っ越してから、「予算が足りないので、
新しい道路の計画は取りやめにする」と市が発表したそうです。
なんだか、人間の世界がだんだん元気がなくなってきているみたいです。
僕は、今の店に入ったことは1度しかありません。
すっかり年をとって自分ではもう歩けなくなっていた僕を、パパが家から
車に乗せて連れてきてくれました。
僕の旅立ちからしばらくしてヨハンが家族の仲間入りをし、ここで
あゆちゃん、ひろちゃんと一緒に楽しい年月を過ごしました。

「本の匂いがして、図書館らしくて好き」とあゆちゃんが言っていた公園の
古い図書館の建物も、今、取り壊されて少しずつ姿が崩れていきます。
あゆちゃんとひろちゃんが真夏の陽射しを浴びた西公園のプールは、
地下鉄が地上へ現われて走る通り道になります。
そして、店の近くでも地下鉄の工事。
電車が通るようになり、すぐそばに駅ができたら、この町も変わっていくの
かもしれませんね。

あゆちゃんもひろちゃんも、それぞれの人生を歩もうとしています。
2人がこの店にいなくなってしまったら本当に寂しいけれど、
だけど、元気いっぱい、わがままいっぱい、可愛さいっぱいのバナ子が
います。
君に頼んだよ、バナ子。今は、君が店の看板犬だ。
さぁ、寒さで丸くなっていないで、風の中を走っておいで!
 
                         
                           今日はここまで、またね。 
                                 Beethoven

大学卒業の長女と、三女

あゆちゃんは恐いけど、大好き!

高校卒業の次女と、三女

ひろちゃん、命! 大好き!
No.149 No.151