ベーからの手紙      

No.106.JUL .9. 2004.


 
元気ですか?
 毎日、本当に暑いですね。
 今年は、僕達セント・バーナードにとってはつらい夏です。
 日射病や熱中症にかからないように気をつけなくちゃ。


さて、イタリア生まれのセント・バーナード、マーキュリー君。
今日は、日本での家族となったYさん夫妻の、イタリア訪問計画の話を続けますね。
Yさんは今、イタリア語を勉強中。
旅行の予定表は、ジグソーパズルみたいに少しずつ出来上がっています。

子犬達が生まれ、どの子が日本行きの飛行機に乗るかを決め、
動物の検疫を通ることができる生後3ヶ月まで育て・・・、いろんな形でマーキュリー君に
関わってくれたイタリアの男達、グイドさん、ヴィットリオさん、マルコさん。
3人は、Yさん夫妻の歓迎ディナーを計画してくれています。
 「イタリアン・フード・ディナーだ。 3人の家は離れているけど、
  ひと晩、俺達は集まるよ。」

そして9月11日、セント・バーナードが雪のアルプスの救助犬として有名になった
サン・ベルナール峠(St.Bernard Pass)、つまり僕達の聖地で開かれる
バーナード犬だけのドッグショー、”第1回 バーリー・カップ”。
幸運の神様のお陰で、Yさんはこの日、サン・ベルナールへ行くことが決まりました。
生まれた子犬の中からマーキュリー君を選んでくれたグイドさんの、心強いメールです。
 「サン・ベルナール宿坊(St.Bernard Hospice)の宿泊予約は、OKだよ。
  ただし、『古い』からね。
  きっと、Yさんにとって貴重な体験になること、請け合いだ。
  峠には知り合いがたくさんいる。 任せてくれ。」

ヴィットリオさんは、新しい時代のセント・バーナードを生み出そうとしている、
研究熱心な、まだ若いブリーダー(繁殖者)です。
マーキュリー君は、ヴィットリオさんが自信を持って日本へ送り出した犬です。
イタリアにも、いろんなブリーダーがいるみたいだけどね。
 「金もうけに熱心な奴ら、口先だけのいい加減なことを言って犬を売る奴らは、
  世界中どこにでもいる。 うんざりさ。」
マーキュリー君に関わったイタリアと日本の男達は、なぜか気が合ったみたいです。
ドッグショーで上位入賞する素敵なセント・バーナードを次々と送り出している、
イタリアで1番大きくて、1番有名な犬舎は、「トッレ・デ・ペルージャ(ペルシャの塔)」
という名前、ミラノの近くにあります。
イタリア・セント・バーナード・クラブ AISBの会長をしているボノーミさんの犬舎です。
写真で見ると、とてもりっぱな犬達の住まいがズラ−ッと並んでいます。
 「Yさん、ここへ行ってみないか? ボノーミ夫妻が会いたがっている。
  空港へ迎えに行くそうだよ。」
そこには、マーキュリー君のお父さん、クリフ君がいます。
1年前、「脚に病気がないことが、第1の条件」という、Yさんの子犬の希望を聞き、
ボノーミさんは、すぐにクリフ君の足腰のレントゲン検査をして、
遺伝病がないかどうかをチェックしてくれました。
父犬の飼い主が、生まれた子犬の家族と触れ合う機会は、なかなかありません。
Yさんの予定表に、「トッレ・デ・ペルージャ訪問」が書き加えられました。

最後のマルコさんは、ヴィットリオさんのいとこ。
生まれた子犬達が新しい家族の元へ旅立つまで、自分の子供のように育てます。
1年前の夏、車を運転してマーキュリー君をミラノ空港へ送り、
航空機の出発延期で1晩泊まり、日本への長旅を見送ったのは、マルコさんです。
 「マルコは、マーキュリーを本当に可愛がった。 心から愛した。」
遠い日本へ旅立つ子犬を選ぶために何度もマルコさんの家を訪ね、
子犬達を抱き上げていたグイドさんは心が揺れ始め・・、子犬の中から、
メスのマチルダちゃんを自分の新しい家族にしました。

実は、また1つ、厄介な問題が起きてしまったようなんです。
ヴィットリオさんの心配事です。
 「私は、Yさんに会うのをとても楽しみにしている。 ただ、マルコが・・・。
  マルコがさ、こんなことを言ってるんだ。
  『(マーキュリーを育てるのに)ふさわしい男かどうか、俺が調べる!』って。」
このこと、僕、まだYさんに伝えてないんです。

                                  今日はここまで、またね。
                          
                                                 Beethoven

現在、1才3ヶ月のマーキュリー君

ヨハン&ひろ

日本生まれのセント・バーナード&マーキュリー君

干し草の匂い・・・
No.105 No.107