ベーからの手紙      

No 116.MAY.14. 2005.



元気ですか?
ヨハンが毎日散歩をする国際センターの、川沿いの木。
「クワッ、クワァッ!」 大きな体のカラス達に混じって、
フワフワの毛の小さなカラスが枝にしがみついています。
その向こうの崖からは「クエッ、キェッ!」、キジの鋭い声。
キジも、子供が生まれているのかもしれませんね。

ヨハンが、まっすぐの道をゆっくりと進んで行くと、植え込みの陰からヒョイ、と
黒ネコの親子が現れました。
時々見かける、この当たりに住みついているらしいネコです。
近づいてくる大きな犬を見て、一瞬身を硬くした2匹。
先に立つ母ネコは、合図するように素早く子供を振り向くと、サーッと道を
横切りました。子ネコは、お母さんを追って必死に走ります。
親子が逃げ込んだのは向かい側の駐輪場。
子供は、バイクのタイヤの陰に体を小さくしてじっとしています。
スタスタと歩き続けてさらに近づくセント・バーナード犬を確認すると、
お母さんは、子供が身を隠すバイクの前に堂々と座りました。
ヨハンをジ―ッとにらみつけるその目の鋭さ。
 「私の子に手出ししたら、承知しないよ。」
ヨハンは・・、道端の匂いをかぐのに夢中。
相手が目の前を通り過ぎても見張りを続ける母ネコの眼光に全く気づかず、
いつも通り、の〜んびり。

しばらく先へ進んで、いつもの水飲み場でのどを潤し、隣の藤棚に
近づいていったヨハン。
 「あ!」 母ネコの小さな叫び声が聞こえるようでした。
無事に大きな犬をやり過ごし、ほっとした体つきで藤棚の下へ移動してきた
2匹のネコの動きが、思いがけずまた目の前に現れた彼を見て
瞬時に緊張しました。
子ネコは、大急ぎでベンチの下に潜り込みました。
お母さんは子供の居場所をチラと見ると、ヨハンの正面を向いて
胸を張るように座り込みました。  その威厳のある姿!
ヨハンは、ママにブラッシングしてもらうためにゴロンと横になりました。
あお向けのまま気持ち良さそうに目を閉じて、両手はバンザイ、
その格好でブラシをかけてもらうのを待っています。
母ネコは、そんな大きな犬を油断なく鋭く見つめます。
ヨハンは・・、全く気づきません。
これが1代目のベートーベンだったら、制止するママの声を振り切って、
きっと猛烈な勢いでネコを追いかけたでしょうね。
僕だったら、のっそり近づいて母ネコに逆襲されていたかもしれないな。

そう、僕には、こんな思い出もあります。
パパとママと一緒に、林の中の小道を歩いていた時のことでした。
ちょっと先に、小さな茶色い子供の鳥がヒョコヒョコと姿を見せました。
 「キジの子供だ。」
僕が思わず近づこうとした途端、大きな鳥が目の前に飛び出してきました。
茶色い羽の母さんキジ。
羽を片方だけ大きく広げ、片足を引きずるように僕の目の前を動き回ります。
 「私はケガをしているよ。 さぁ、捕まえてごらん。」
僕達は、母さん鳥に背を向けて、来た道を戻りました。

子供を守ろうとするお母さんって、強いんですね。
でも、でも・・、僕のお世話をしてくれた訓練士さんがこう言ってたっけ。
僕の母さんは、僕達を生んだ後、ちっとも子供の面倒をみなくて
大変だった、って。

                                 今日はここまで、またね。
                          
                                        Beethoven




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